司法修習生のひとりごと – 法科大学院って?

以前は、司法試験には、誰でも、いつでも、挑戦することができました。大学を卒業した後すぐに司法試験に挑戦してもよかったですし、在学中に挑戦することもできました。大学にも行かず、いきなり挑戦することもできたのです。司法試験に合格すると、二年間の司法修習があり、これを終えると法曹になることができます。

数年前に制度が変わり、いまでは、基本的に、法科大学院を卒業しなければ司法試験を受けることができません。以前の司法修習には「前期修習」というものがありました。修習の最初に行われるもので、修習生全員が司法研修所に集められ、そこで法律実務の基本(のうち座学で学べること)を集中的に学んだそうです。現在の司法修習では、前期修習に相当するものがなく、その役割を法科大学院が果たすことが期待されています(国の勝手な期待であるようにも思えますが…)。

そんなわけで、法科大学院では、実務を見すえた教育が行われています。具体的には、一般的な法学部で行われているような、教授による講義だけではなく、現実の事件に基づいた事件記録を使って、事件処理について学ぶ演習なども行われます。弁護士、裁判官、検事など、実務家による講義があるところもあります。これは法科大学院にしかみられないものだと思います。

過程としては、二つ用意されています。ひとつは、まったく法律について学んだことのない人を対象にした(実のところは法学部出身の人なども普通に入ってくる)、三年コース(未修コース)。もうひとつは、学部程度には学んだことを前提とする二年コース(既習コース)。自分の実力に合わせて選択できますが、それぞれ別々に入試が行われるので、倍率等異なってくるのが通常なようです。わたしは他学部からの挑戦だったので、未修コースを選びました。

法科大学院の入試は、未修と既習で異なります。

未収の場合は、共通に行われる適性試験と、大学ごとに行われる試験があります。適性試験では、論理パズルのような問題が大量に出題されます。大学ごとの試験では、論文と面接があります(大学によっては違うかも?)。どちらも法律とは関係ない問題が出題されます。

既習の場合は、法律に関する論文問題などが出題されます。大学によって、かなり違うようで、よく知りません。

司法修習生のひとりごと – 検察での事件処理

検察実務修習では、三、四人のチームに二件の事件が割り当てられ、約二か月の間に処理することになります(東京の場合)。処理というのは、事件について捜査して必要な証拠を集め、最終的な処分、すなわち公訴提起するか起訴猶予とするかなどを決定することです。被疑者を裁判にかけるかどうかという、その人の人生を左右しかねない大きな判断をすることになるので、みんな真剣に取り組んでいます。

検察ではほとんど捜査などしないのかと思っていましたが、そんなことはなく、かなり頑張って捜査しています。ただ、警察の捜査とは違って、現場に赴くような事は少なく(研修生という立場ではなおさら)、関係人や被疑者の取り調べをして調書を作成することが中心となります。電話で事情聴取したり、検察庁に呼んで取り調べをしたり、なかなか大変です。

もちろん、修習生が一人で全部やらなければならないものではありません。その都度、指導担当検事の判断を仰いだり、相談をしたりしながら、言ってみれば検事の手足として事件処理を進めていきます。しかし、基本的に、検事の方から積極的に修習生に指示をするということはないので、修習生は自分で考えて、プランニングなど行なっていかなければなりません。

司法修習生のひとりごと – 検察の導入教育

検察修習は、まず導入教育から始まります。大学の講義のように、講師(検察官だったり事務官だったり)が修習生を前に事務や、事件を処理する上での考え方などを話してくれます。実体法については大学で教えてくれるのですが、事務などは分からないので、ここで学ぶことになります。 講義によっても異なりますが、長さはだいたい2時間や4時間と、なかなかの長丁場。しかし、講師によって異なるとは思いますが、実例を交えた(守秘義務を負った修習生しか聞けない話!)ものとなるので、飽きずに最後まで講義を受けることができます。

講義とあわせて、演習も行われます。事前に与えられた、事実に基づく資料(当然、持ち出しや複写は厳禁!)を使って設問に答えていきます。今回の修習では、これまでに2回の起案を行いました(最初の1週間で2回も起案させられるとは…)。1回目は勾留請求書、2回目は終局処分です。それぞれ、どのようなことを書けばよいか、直前の講義で教えてくれるます。しかし、それ以上の情報は与えられず、ぶっつけ本番に近い状況で答案を書かされることになります。正直、キツイです。

修習2週目の頭には、全国一斉起案というものが行われます。導入教育で行われる演習では各修習地で独自に作った問題を使って起案演習が行われるのですが、全国一斉起案では、その名の通り、司法研修所が作った共通の問題を使って日本全国の検察庁で起案演習が行われます。驚くべきことに、朝9時から午後5時まで、丸一日を使います。それでも時間が足りないと言われています。何かおかしい。講師の検事からは「東京だけ成績が悪いということの無いように!」と言われました。自信ありません。えっへん。