司法修習生のひとりごと – 司法試験って?

司法試験という試験の存在は、多くの方々が知っていることだと思います。しかし、司法試験はどういうものなのか? 司法試験に合格すると何ができるのか? ということまで知っているかというと、そうでもないようです(自分もこの道に入るまではよく知らなかった)。まずは、この辺りから書いていきたいと思います。

司法試験に挑戦する方々の最終的な目標は、「裁判官」「検察官」「弁護士」、すなわち法曹になることです。これらの職業は、基本的に、司法試験に合格しなければ就くことができません。政令で定める大学において三年以上法律学の教授・准教授であった人などは、司法試験に合格しなくても法曹の職に就くことができますけれども、そういう目的で大学の教授になる人はいないと思います。たぶん。

司法試験に合格したからといって、すぐに法曹の職に就けるというわけではありません。司法修習という、研修期間のようなものを終えてはじめて、法曹の職に就くことができるようになります。この司法修習というのは、企業の研修期間のようなものです。現場(法廷であったり弁護士事務所であったり)の中で、現職の裁判官・検察官・弁護士に指導を受けながら、実務能力を磨いていきます。

以前の司法試験には、受験資格はありませんでした。受験料さえ支払えれば、誰でも司法試験を受けることができたのです。しかし、平成16年に制度が変わり、法科大学院の課程を修了したことが受験資格となったため、誰でも受けることができるものではなくなってしまいました。なお、平成24年からは予備試験合格者にも受験資格が認められるようになりました。この予備試験は、受験料を支払うだけで、誰でも受けることができます。

司法試験に関する情報は、法務省のホームページから得ることができます(「資格・採用情報」内)。

司法修習生のひとりごと – はじめに

しばらく前のことになりますが、何をどう間違ったのか、司法試験に合格してしまいました。

手続なども済み、今月末からは新第65期の司法修習生として一年間の修行を積むことになります。修習の日々を自分の中だけで終わらせてもいいのですが、せっかくブログという外部発信の場を持っているのですから、修習の日々で感じたことや修習そのものについて、記事として書いていきたいと思います。というのも、つい先日、知り合いに誘われて飲み会をしていたのですが、その席上で「司法修習って何やるの?」「司法試験に受かったらもう弁護士になれるの?」というような質問があり、法曹の世界の仕組みというものがあまり知られていない事実に(いまさらながら)気付いたということがあります。ここで司法修習について書くことで、「司法修習生というのはこういうことをやっているんだ」「法律家になるためにはこういうことをやるんだ」ということを伝えることができればいいなと思っています。(そういうことが十分に伝われば、給付金制度の廃止がいかにトンデモであるか、それを断行した民主党がいかに国民のことを考えていないか、という理解も広まっていくハズ!)

さて、最初に書かなければならないのは「守秘義務」についてです。

司法修習とは、平たく言えば、法律実務家になるための「訓練期間」です。しばらく前に流行った言葉でOJT (On-the-Job Training)というものがありますけれど、それと同じようなものだと考えていいと思います。つまり、実際の事件を処理しているところ(裁判の法廷であったり弁護士事務所の会議室であったり)に司法修習生が入っていき、裁判官・検察官・弁護士の指導を受けながら、実務について学んでいくのです。

そうなると、司法修習生は現実に起こっている事件の処理に関与し、それらの資料を見ることになります。ほかにも、弁護士との相談の中だけで出てくるような話を聞くことがあるかもしれません。これらは立派な個人のプライバシーです。みだりに他人に知らせることは、重大なプライバシー侵害となりますし、法曹や司法修習制度の信用性にも関わります。そのため、司法修習生には(その他の法曹についても当然そうなのですが)重い守秘義務が課せられています。事件で知った秘密を他人に話してしまったり、インターネットで発信することは絶対に許されません。

そんなわけなので、個々の事件について触れた記事は書きません。守秘義務に触れない範囲で、書けることだけについて紹介していきたいと思っています。