またえらく間が空いてしまいました。
日々の修習だったり,週末の用事だったり,いろいろと忙しく,記事を書く暇が取れませんでした。決して,忘れていたというわけではありませんよ。ホントですよ。
今回は民事裁判修習について書こうと思います。
検察修習は,検察庁で検察官として一つ(又はそれ以上)の事件を担当するというものでした。ならば,民事裁判修習は,裁判所で裁判官として一つ(又はそれ以上)の訴訟を担当するようにも思えてしまうのですが,さすがに,そこまではやらせてもらえません。裁判官に付き従って,その業務を観察するというのが主な内容になります。裁判所に行くと,裁判官の隣あたりに「司法修習生」という札の置かれた席があるのを見るかもしれませんが,そこに座っています。ほか,裁判官が担当している事件の記録を読み込んだり,それらの記録を使って判決起案をしてみたりします。これらの活動を通して,裁判官がどのようなことを考えているのか,どのように訴訟指揮をしているのか,どのように判決をするのか,など色々な実務を学んでいきます。難しい事件が舞い込んだりすると,その議論に巻き込まれたりもします。
裁判官は判決を書くときに一人でうーんうーんと考えているように思うかもしれませんが,そんなことはありません。他の裁判官と議論をしながら,自分の考えを突き詰めていっています。判決を書くのは一人ですが,その判決を作り上げるのには,たくさんの裁判官の意見が反映されているのです。当然といえば当然ですが,あまりその姿がイメージできなかったので,議論を繰り返しながら自分の考えを練り上げている姿は新鮮でした。
また,裁判官と同じ立場で資料を見ることができるので,訴訟に提出されたあらゆる証拠を見ることができます。「原告の訴状に書いてある請求原因は,はたして権利の発生要件を満たしているのか?」「被告の答弁書は,結局何が言いたいんだ?」「この証拠を出してきて,何を立証したいんだ?」「この弁護士の準備書面は理路整然として分かりやすい!」などなど,いろいろな感想があります。
たくさんの記録を読んで(まだ10件程度ですが)思ったのは,「意外と本人訴訟が多いなあ」ということです。民事訴訟は当事者に弁護士がつく必要はなく,自分自身の力で訴訟を提起することができます(刑事訴訟は法律で弁護士資格を持った弁護人をつけなければならない場合がある)。最近は司法書士の業務範囲が増えてきたり,本人訴訟が知れ渡ってきたり(たくさんのガイド本が出版されています),経済事情などがあり,このような状況になっているのでしょうか。そのような訴訟でも,裁判所はちゃんと受理して,訴状などを読まなければならないので大変です。ほとんどの一般市民は訴訟手続のことなど知りませんし,民法の規定も知らないかもしれません。そのため,訴状はめちゃくちゃ(要件事実を満たしていなかったり,法律効果の発生が読み取れなかったり,意味不明な主張をしたり)なことが多いです。もしこれから本人訴訟を起こそうと考えている人がいるならば,よく法律について勉強してから提起した方がいいと思います。法律上の原因がない請求は認められませんし,しっかりした準備書面が用意できなければ期日を重ねるだけで結果が出るまで長い時間がかかってしまいます。費用を安く抑え,迅速な裁判とするためには,十分な知識が必要です。それは自分のためにもなりますし,裁判所の負担を軽くして社会全体のパフォーマンスを向上することにもつながります。