震災について思うこと

東北関東大震災では、まさに甚大というべき被害が生じました。いまもなお苦しんでいる被災者の方々には、かける言葉もありません。辛いとは思いますが、毎日を生き延びていっていただきたいと願うばかりです。

今回の震災は、人間の防災対策を嘲笑うかのような規模だったので、対策が不十分だったとかいうことはできないでしょう。場所によっては、この高台に逃げれば大丈夫…と思っていたら、それを上回る津波が押し寄せて多数の犠牲者を出したというところもあると聞きます。天災に想定外はない、とはいいますが、まさか高さ100メートルの防波堤を築くわけにもいきません。いまの技術では防ぐことのできない、大自然の脅威であったといえます。

しかし、そのような事情があるとしても、人災も多かったことは否めません。

どうも、最近の日本は、結果を求めるあまり、安全性などの点について軽視しているように感じられました。悪名高き事業仕分けは、その一例でしょう。十分に知識を持たない人たちが、コストだけを見て、その価値を決めて仕分けていく。防災対策費用も削減されていたと聞きます。実際にはトンデモな事業も数多く、「切るべきではないが切られてしまった」ものは少なく、切られるべきものは切られたのかもしれないのですが、「切ってはいけないが切ってしまった」ものも含まれていたと思います。そもそも、すべての切るべきものが検討に入っていたのかというところから怪しいのですが…。まあ、これはあくまで一例であって、企業活動も、結果が第一であって、安全性などは二の次としていたことが多いように思われます。ソフトウェア開発なども、納期の死守や顧客に約束した機能(それも営業など開発陣以外が勝手に約束したものである場合が多いのでしょうけれども…)が絶対であって、それ以外の要素、たとえば保守の容易さなどの観点は軽視される傾向にあるように感じています。そのようなことを考えていては商売ができない、と言われそうですが、そもそも、そのような能力しかない者がソフトウェア開発をしていいのかと疑問に思ってしまいます。重要な業務に情報処理システムは必ずといっていいほど使用されていますが、そのシステムははたして信頼できるところが作っているのでしょうか。震災後にみずほ銀行は大規模なシステムトラブルに見舞われましたが、それもこのような姿勢が浮き出てきたものといえないのでしょうか。

福島第一原子力発電所の炉心トラブルも、同じように感じています。つい先ほどテレビのニュースで放映されていましたが、ロシアの原子力作業員によればチェルノブイリの原発事故における教訓が生かされていなかったということです。今さら言っても始まらない、と思いましたが、実は福島原発は古い原子力発電所で、津波被害などの心配のないヨーロッパにおける原発の設計を参考に作られたため、津波に対する不安が存在していたとのことです。つまりは、安全性を軽視した結果、今回のような深刻な被害を引き起こしてしまったということになります。

「想定外の津波だった」という反論もあるのでしょうが、原子力発電所のような、事故が起こったときには広範囲に深刻な被害を与える施設は、「絶対安全」が基本です。津波が来ても防波堤で~メートルまでは耐えられる、とされていても、それ以上の津波が来ないという保障はありません。一般の施設であれば、そのような津波対策だけで十分かもしれませんが、原発では「ダメだった場合はこっちの方法で大丈夫」という代替策を用意しておかなければなりません。しかも、二重三重それ以上に用意しておかなければ、原発に求められる安全基準を満たしているとはいえないでしょう。もし、国がそのような基準を設定していなかったのであれば、それは国の怠慢、あるいは認識不足としかいえません。天下りなどにより癒着が生じていたのではないか、それによって基準が甘くなっていたのではないか、と疑われても仕方ないと思います。本当にそうなのかは知りませんが。

書くときりがないのでここでやめますが、何にしても、今回の震災は、現代社会は万一の事態に対しての備えを軽視していたのではないか、という思いを強いものとしました。堤防などの構造部分(ハードウェア)は優秀なのですが、それを運用するシステム(ソフトウェア)がどうにも貧弱で、ハードウェアが最初にそびえる最強の、そして最終の砦になってしまっているように思います。この砦が突破されると、あとはもはや復旧不能になってしまうのです。以前から、日本はこの部分が苦手だったように思います。はたして、次に起こる大災害にはどう対処すればよいのでしょうか。残念ながらわたしは具体的な知見を有していないので、研究者の方々がよい知恵を出し、政治家の方々が私欲を棄ててそれらを取り入れ、日本に住む人々すべてが純粋な心で協力してくれればと願うばかりです。

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